新宿 貸会議室の利用が堅調に推移
下落期待が一般化している以上、買いは入らず、不良資産の売却もままならず、停滞を長期化させる理由になるだろう。
この問題については、あとで論ずる。
システムの機能不全が大問題となり、銀行から金を借りて資産を買った人がもちきれなくなり、返済を怠るようになれば、今度は銀行の損失となる。
銀行が弱体化すれば、金融仲介機能を果たすことができなくなり、経済はさらに悪化するだろう。
また、資産価格が低下すれば、企業の担保価値が下落し、銀行からの借り入れに支障をきたすだろう。
このような経路は「フィナンシャル・アクセラレータ」と呼ばれ、現実に、この効果があることが計測されている。
だが、以上の効果は、大停滞を説明できるほど大きなものだろうか。
もちろん、ストックとフローの価格低下が持続することの効果は大きいだろう。
これは実質利子率が上昇することと同じであるから、永続的な効果がある。
価格が下がりきってしまい、そこで落ち着けば日本全体の損得はゼロ、ということは同じである。
損をした銀行の株価は下がる。
得をした人が下がった銀行の株を買って銀行経営を始めれば(現実には、銀行を経営する能力のある企業が新規に株式を発行し、それを得をした人が以上述べたことは非現実的だろうか。
資本と労働と資産が自由に動くことができれば、少しも非現実的ではない。
それが動けないシステムになっていること、要するにやり直しのできないことが、90年代の不況を長引かせたのではないだろうか。
動けないシステムになっていることは、システムとしてそうなっているだけではない。
思い込みでやり直しができなかったことも多い。
不良資産をたたき売らなかったこともそうである。
やり直しをしないということの問題については、あとで再度論じることにする。
また、借金をして誤ってばかげた支出をしてしまったのなら、節約して返すという方法だけでなく、働いて返すという方法もある。
しかし、あとでくわしく説明するように、バブル崩壊以後、日本の労働者の平均労働時間は減少している。
90年代の大不況をバブル崩壊だけで説明することは、金額的に説明できないだけでなく、論理的にも説明できない。
日本全体では大したことは起こらない。
バブルの時代、銀行貸し出しの対GDP比は、90%から120%にまで30%ポイントも上昇した。
これを金額であらわすと125兆円になる。
125兆円の損失は莫大だが、日本が失った、あるいは失うであろう3000兆円のGDPにくらべればわずかである。
また、この125兆円をたたき売って稼働させれば、買った人の損は売った人の得という事実に変わりはない。
もちろん、この不況のなか、働きたくても余計に働かせてくれるところなど、どこにもないという反論がすぐあるだろうが、余計に働きたい人がいるのに働けないということは、システムがうまく機能していないということである。
すなわち、90年代の大不況は、バブル崩壊の後遺症だけでは説明できず、システムがうまく機能していないことに関係があるということである。
バブル崩壊によって、地価10株価総額が1558兆円減少してしまったから日本は貧しくった、というような単純な議論は、金額の大きさが印象的であることは認めるとしても、90年代の低成長を、実体経済の問題とする説もある。
日本の成長力、潜在成長率が、3〜4%から1%に低下したからだという考え方がある。
たしかに、実際のデータで、成長率を、資本の伸び、労働の伸び、生産性(全要素生産性)の伸びに分解すると、すべての要因が停滞し、潜在成長率も低下していることになる。
しかし、第7章も指摘しているように、労働の投入が伸びないのは、80年代末から進んだ労働時間短縮の結果であるとともに、不況で労働需要が減少していることの現れである。
資本の伸びの停滞は不況で需要がないからであり、生産性が停滞したように見えるのは、不況で生産物が売れないからである。
元橋〜2002〜は、これまでに生産性を計測したさまざまな研究の問題点を克服したうえで、新しいデータを用いて生産性を推計している。
この結果を示した表によれば、日本の生産性(全要素生産性)の年平均上昇率は、80〜85年の0.60%から95〜2000年の0.74%へと、むしろ上昇している(バブル期の85〜90年を除き、95〜2000年についてのみ説明する)。
労働と資本の両者を合わせると1.93%ポイントの低下となるから、これで80年代の前半にくらべて、95〜2000年の成長率が1.80%ポイント低下したことが説明できる。
大停滞期には、生産性が低下せず(むしろ、0.60%から0.74%へと上昇している)、労働と資本の投入が低下しているのである。
泡かといえば、すでに述べたように、なぜ、資本の投入か要するに、雇用が減れば消費も減り、消費が減れば投資も減るというスパイラル的なメカニズムも働くだろう。
同時に、デフレで実質金利が上昇し、投資が減り、総需要が減り、労働需要が減るというメカニズムも働くだろう。
これらすべてが働いて、総労働時間が減少したのである。
からである。
そして、なぜ需要が低下したかといえば、デフレでいたからである。
同じことを、より簡単なデータで直観的に説明しよう。
通常のGDPは90年代以降、成長率が屈折しているが、時間当たりGDPはバブル以前の成長率にかなりもどっているように見える。
総労働時間(一人当たり労働時間×雇用)が減少したのは、あとでくわしく分析するが、90年代はじめに隔週週休2日制から完全週休2日制への時短が行われたことと、デフレで実質賃金が上昇し、労働需要が減少して雇用も残業時間も減り、失業率が高まったからである。
大停滞の謎を解くことになる。
明らかにすることが、キャッチアッブの余地はまだまだある世界一豊かになった日本は、キャッチアップ過程を終え、いまや成長するための技術のストックがなく、停滞するしかないという議論があるが、日本が世界一豊かになったというのは、為替レートで計った豊かさにすぎない。
為替レートは貿易財の価格で決定される面が強く、国民の真の豊かさの指標ではない。
自由に貿易される財、たとえば日本の自動車の価格がアメリカよりも高ければ、アメリカでつくられている日本の自動車を日本にもちこもうという圧力が生じ、日本とアメリカの自動車の価格を同じにしようとする圧力が働く。
もちろん、仕様のちがいなどによって、日米の自動車価格がまったく同じになることはないが、そのような強い力が働くことは確かであしかし、貿易できない財やサービスの場合には、そのような力が働かない。
アメリカの映画料金が日本の3分の1でも、わざわざアメリカに映画を見にいく人はいない。
アメリカの預金振込料が日本の十分の1でも、そのサービスは日本では使えない。
しかも、サービス化の進んだ先進国において、国民のほとんどは貿易できる財よりも貿易できないサービスをより多く消費している。
したがって、国民の本当の豊かさは、計られる。
為替レートで計った一人当たりGDPでは、日本は80年代末にアメリカに追いついているが、購買力平価ではそうではない。
これは、日本にキャッチアップの余地があることを示している。
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